法華経を学ぶ

「妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)五百弟子受記品(ごひゃくでしじゅきほん)第八

説法第一 富楼那(ふるな)尊者

 

 富楼那は大商人の第4子として生を受けた。父の死後、兄たちと争って一時不遇の身であったが、天性の商才のお陰で父と同じく大商人となった。ある時仕事仲間からお釈迦様のことを知り、自ら赴いて弟子となった。釈尊の十大弟子のひとりで説法第一と称せられた。母の名は弥多羅尼(みたらに)、その子であるから富楼那弥多羅尼子(ふるなみたらにし)という。

 

五百弟子受記品第八の大意

 前の化城喩品(けじょうゆほん)第七で、お釈迦様の教化が今生一世のものでなく、三千塵点劫の過去から続くものであったことを聞かされた富楼那(ふるな)は自らを顧みながらそのことを領解(りょうげ)した。これに対しお釈迦様は富楼那の説法教化を述成(じゅつじょう)し、富楼那に法明如来(ほうみょうにょらい)の記別をされた。次いでそれを聞いていた千二百の阿羅漢(あらかん)に成仏の授記(じゅき)が予定され、その中でも憍陳如(きょうじんにょ)は普明如来(ふみょうにょらい)となり、優楼頻螺迦葉(うるびんらかしょう)等の五百の阿羅漢も皆同じ名号の普明如来となることを授記されたのである。

 

 これまでは仏弟子たちの領解の後に授記であったが、ここでは五百の阿羅漢が授記されたのち、領解をしたのである。つまり自分たちの無智を悔いて、自分たちが初めてわかった真理をたとえ話で説明した。それが衣裏宝珠(えりほうじゅ)の喩えである。

 

 ある人が親友の家で酒に酔って寝てしまった。友人はその時、急用で国を離れなければならぬことになったので、寝ている人の着衣の裏に宝珠を縫い付け、これをもって生活を築くように託した。その人は全くそのことに気付かず、目をさますとまた流浪の生活を送ったのである。働いてわずかの報酬を得れば、それに満足し、困窮の日々を過ごしていた。その後、たまたま親友に会ったのである。親友は宝珠を送ったことを告げると、その人はいたずらに辛苦していたことをはじめて知ったのである。親友とは先の化城喩品で説かれた第十六番目の王子を指し、酒に酔うて臥せりとは、お釈迦様の前身である第十六王子が法華経を覆講(ふくこう)するのを聞いて、内心に少しだけ理解することが出来たものの、無明のために迷失してしまったことである。

 

 仏様によって仏の道を教えられながら、それに気付かなかった人々、それが自らだったことを喩えてよろこびの領解としたのである。

 

日蓮宗修養道場(石川道場)述参照

人天交接(にんてんきょうしょう)

 法明如来となった富楼那は、無限に広い世界を、すべて仏国土にしようとして教えを弘めていった。その仏国土とはどのようなところなのか。仏国土は七宝を敷きつめ、土地は平らで山も谷も川もない。七宝で飾られた楼閣と、諸天の住む宮殿が虚空に聳えたっている。

 経文では「人天交接して、ふたつながら相見ることを得ん」と説いている。これは、人間界の者と天上界の者とが、互いに心と心が通い合って、両者ともに仏の教えに帰依することをいう。

法喜食(ほうきじき)と禅悦食(ぜんねつじき)

 この国土の人々は、食事が我々とは異なる。すなわち法喜食と禅悦食を食べている。仏の正しい教えを聞いて、心に大いなる喜びを感じているのが法喜食であり、さらにその教えを実行して大きな満足と喜びを得るのが禅悦食である。

内秘菩薩行 外現是声聞

 この経の経文には、「内に菩薩の行をかくし、外にこれ声聞なりと現わして、少欲にして生死を厭えども、実には自ら仏土を浄む」とある。富楼那尊者は、本当は高い菩薩の境地をすでに得ているのであるが、それを心の奥深くかくして、少欲懈怠(しょうよくけだい)の者たちに、一緒になって低い教えから説いて行き、だんだんと皆の境地を自分と同じ菩薩の心に高めてゆくのである。

衣裏宝珠とは

 「衣裏宝珠の喩え」に出てくる宝珠とはわれわれの仏性のことである。人間はすべて仏性をもっているというのは、大乗仏教の根本の考えである。人間がもっている仏性という宝珠をすでにもっていることが、酔って眠っていなければ誰にでも気が付くはずである。しかし酔っていては、珠をもらっても気が付かない。それと同じように、われわれの心の中にはすばらしい宝があるにもかかわらず、目が曇っているためにそれが見えない。そのため一生を空しく過ごしてしまうのである。 そのことに気付くことが悟りであり、お釈迦様の覚醒である。

2011年仏蹟参拝 ブッダガヤーにて
2011年仏蹟参拝 ブッダガヤーにて

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