二十五日 知恩報恩(ちおんほうおん)

開目抄(かいもくしょう)にいわく

 孝と申すは高なり。天高けれども孝よりも高からず。

 

 又孝とは厚なり。地あつけれど孝より厚からず。

 

 聖賢(せいけん)の二類(にるい)は孝の家よりいでたり。

 

 何(いか)に況(いわん)や仏法を学せん人、智恩報恩なかるべしや。

 

 仏弟子は必ず四恩をしって智恩報恩をほうずべし。

 

(1 51歳 2 文永9年 3 佐渡塚原 4 544頁)

口語訳「日蓮聖人全集」より

 孝ということは高いということである(「孝」と「高」とは同音であるから、「孝」とは「高い」という意味を兼ね具えている)。天が高いといっても孝の徳より高いことはない。また孝とは厚いということであって、大地がどれほど厚いといっても孝の徳より厚いことはない(「孝」は大地よりも「厚い」のである)。儒教の説く聖人と賢人との二種類の人は「孝」を重んじる思想を根幹としている。だから、まして仏法を学ぼうとする人は恩を知って恩を報ずることが根本になければならないはずである。すなわち、仏弟子はかならず父母の恩・一切衆生の恩・国王の恩・三宝の恩という四つの恩を知って、「恩を知り恩を報じる」という命題に応えなければならない。